城跡や城郭、寺社、古民家などの歴史的建造物について調べるとき、自治体の文化財資料や学術論文だけでなく、個人が公開したブログ記事が貴重な手掛かりになることがあります。特に城郭巡りのブログには、訪問日時、現地までの経路、遺構の状態、撮影写真、案内板の内容などが残されており、個人が歴史的建造物をどのように観察し、記録していたのかを知る資料として利用できる可能性があります。
一方、Yahoo!ブログはすでにサービスを終了しているため、現在の一般的なブログと同じ方法で記事を検索・閲覧できるわけではありません。また、個人ブログを研究資料として利用する場合には、記事が残っているかどうかだけでなく、情報の信頼性、著作権、個人情報、引用方法などにも注意が必要です。ここでは、Yahoo!ブログで公開されていた城郭巡りの記事を手掛かりとして、個人による歴史的建造物の記録方法を調査する際の考え方を整理します。
Yahoo!ブログの記事は現在そのまま検索できるとは限らない
Yahoo!ブログは2019年12月15日にサービスを終了しました。そのため、かつてYahoo!ブログ上に存在していた記事のURLへアクセスしても、当時の記事をそのまま閲覧できないケースがあります。
ただし、サービス終了は、過去の記事に含まれていた情報が完全に失われたことを意味するわけではありません。ブログ運営者が別のブログサービスへ記事を移行していたり、同じ内容を別サイトへ再掲載していたりする場合があります。また、検索エンジンの検索結果、第三者サイトからのリンク、ウェブアーカイブなどを手掛かりとして過去の記事の存在を確認できる場合もあります。
したがって調査では、最初からYahoo!ブログ内だけを探そうとするのではなく、ブログ名、投稿者名、城名、記事タイトル、旧URLなど複数の情報を組み合わせて追跡する方法が現実的です。
城郭巡りブログから調査できる「記録方法」とは
城郭巡りの記事を研究対象にする場合、単に「どの城へ行ったのか」を集計するだけではありません。記事の構成を分析すると、一般の訪問者が歴史的建造物をどのような視点で観察し、何を残そうとしていたのかを調べられます。
例えば、次のような項目を記事ごとに記録すると比較しやすくなります。
| 調査項目 | 確認する内容の例 |
|---|---|
| 訪問情報 | 訪問日、時刻、季節、天候 |
| 位置情報 | 住所、地図、登城ルート、最寄り駅 |
| 写真 | 石垣、堀、土塁、門、櫓、碑、案内板など |
| 写真の説明 | 撮影地点や被写体について説明しているか |
| 現地観察 | 保存状態、地形、改変、復元施設など |
| 歴史情報 | 築城年代、城主、合戦、廃城時期など |
| 情報源 | 案内板、書籍、自治体資料などの記載 |
| 個人的評価 | 感想、発見、推測、再訪時の比較など |
こうした項目を複数の記事について整理すると、「写真を中心に記録する人」「歴史資料と現地観察を照合する人」「アクセス方法を詳しく残す人」といった記録スタイルの違いも見えてきます。
写真は個人による歴史的建造物の記録を分析する重要な要素
城郭巡りブログを調査するとき、とりわけ重要なのが写真です。観光写真として天守だけを撮影しているのか、それとも石垣、土塁、堀切、曲輪、礎石など細かな遺構まで撮影しているのかによって、投稿者の記録意識には大きな違いがあります。
例えば同じ城跡について、2008年の記事では空き地だった場所に、2015年の記事では説明板が設置されている、といった変化が確認できる可能性があります。このような場合、ブログ写真が特定時点における現地の状態を示す補助資料になることがあります。
ただし、写真だけから撮影年月日や正確な場所を断定するのは危険です。投稿日と撮影日が異なる可能性もあるため、本文の記述、写真の説明、他の資料などと照合する必要があります。
消えたYahoo!ブログの記事を探す方法
過去の記事を探す場合は、まず検索エンジンで「城名+Yahoo!ブログ」「城名+ブログ名」「記事タイトルと思われる語句」などを検索します。旧記事へのリンクを掲載した別サイトが見つかれば、ブログ名や旧URLを特定できる可能性があります。
旧URLが判明している場合には、Internet Archiveが提供するWayback Machineなどのウェブアーカイブに保存されていないか確認する方法もあります。すべてのページが保存されているわけではなく、画像やページ内リンクが欠落していることもありますが、調査の手掛かりになります。[参照] Internet Archive Wayback Machine
また、Yahoo!ブログ終了時には他サービスへブログを移行した利用者もいました。特徴的な記事タイトルや本文の一節、ハンドルネームなどが分かっている場合、それらを検索すると移転先が見つかることがあります。
研究では「個人ブログの記述」と「確認できる事実」を分ける
個人ブログには現地を訪れた本人だからこそ残せる情報がありますが、学術論文や自治体の文化財調査報告書と同等の信頼性が保証されているわけではありません。歴史上の年代、人物、建築物の用途などについて誤認が含まれている可能性もあります。
そのため、ブログを歴史的事実そのものの根拠として扱う場合には注意が必要です。一方、「2000年代の個人ブロガーは城跡をどのように撮影・記述していたか」という研究であれば、ブログの文章や写真そのものが調査対象になります。この二つは区別して考える必要があります。
例えば「この石垣は江戸時代に築かれた」という記述の真偽を論じるのであれば文化財調査報告書などとの照合が必要ですが、「投稿者が石垣を撮影し、江戸時代のものだと説明していた」という記録行為を分析するのであれば、そのブログ記事自体が一次的な研究対象になります。
複数の記事を同じ基準で整理すると調査しやすい
個人による記録方法の傾向を調べるなら、一つの記事だけで結論を出すより、複数の記事を共通の基準で比較する方法が適しています。表計算ソフトなどを利用し、記事ごとに調査項目を記録していくと分析しやすくなります。
例えば「訪問年月」「写真枚数」「地図の有無」「アクセス情報の有無」「歴史解説の有無」「案内板写真の有無」「参考文献の有無」「保存状態への言及」といった項目を設定します。20件、50件と記事を整理していけば、当時の城郭ブログでどのような記録方法が多かったのかを定量的にも検討できます。
さらに投稿年代を分ければ、デジタルカメラやスマートフォン、地図サービスなどの普及によって個人の記録方法がどのように変化したかを研究することも考えられます。
著作権・引用・個人情報にも注意する
公開されていたブログであっても、文章や写真の著作権がなくなるわけではありません。調査結果を論文やウェブ記事として公開するときは、必要以上に文章や画像を転載せず、著作権法上の引用の要件を確認することが重要です。
特に写真をそのまま自分の記事へ掲載することと、写真に何が写っていたかを分析して文章で説明することは別の問題です。研究上必要だからという理由だけで、第三者の写真を自由に転載できるわけではありません。
また、過去のブログには投稿者の氏名、居住地域、家族、車両などの情報が含まれていることがあります。歴史的建造物の記録方法を研究する目的であれば、研究に不要な個人情報まで収集・公開しないよう配慮することも大切です。
まとめ:Yahoo!ブログの城郭記事は条件を整理すれば調査資料になり得る
Yahoo!ブログで公開されていた城郭巡りの記事は、サービス終了によって現在では探しにくくなっています。しかし、移転先のブログ、検索エンジンに残った情報、第三者サイトからのリンク、ウェブアーカイブなどを組み合わせることで、過去の記事を確認できる場合があります。
個人による歴史的建造物の記録方法を研究するのであれば、写真、撮影対象、訪問日時、現地観察、アクセス情報、歴史解説、情報源、個人的感想などを共通項目として整理すると、記事間の違いや時代による変化を分析しやすくなります。
重要なのは、ブログに書かれた歴史情報の真偽を調べることと、ブログそのものを「個人が何をどのように記録したか」という研究資料として分析することを区別することです。資料の出典や保存状況を記録し、著作権や個人情報にも配慮しながら利用すれば、消失したブログサービスの投稿もデジタル時代における文化財・歴史的建造物の記録活動を考える貴重な手掛かりになり得ます。


コメント